リード:クロムめっきには大きく分けて装飾向けの「通常クロム」と、摩耗や傷に強い「硬質クロム(ハードクロム)」があります。ここではBtoC(個人・小規模案件)向けに、違い・向いている用途・発注時のポイントをやさしく整理します。
先に3つのポイント
- 見た目重視なら通常クロム、摩耗や耐久重視なら硬質クロム。
- 硬質クロムは厚めに付けられ、磨耗面の補修・寿命延長に有効(仕上げ研磨とセットで考える)。
- 寸法や形状の指示がコストと品質を左右:角の面取り・治具痕の位置・磨きの有無を最初に共有。
通常クロムと硬質クロムの違い(ざっくり)
| 項目 | 通常クロム | 硬質クロム(ハードクロム) |
|---|
| 主な目的 | 外観・光沢、耐食 | 耐摩耗、低摩擦、かじり防止、補修 |
| 見た目 | 鏡面~高級感のあるツヤ | 落ち着いた銀白色(仕上げ研磨で鏡面可) |
| 膜厚の傾向 | 比較的薄め | 厚めに可能(磨耗補修・寸法復元に使うことも) |
| 耐摩耗性 | 標準 | 高い(摺動面・シャフト向け) |
| 下地の扱い | ニッケル下地と併用が多い | 同様に下地Niや下地処理を重視(密着の鍵) |
| コスト感 | 外観要求で変動 | 膜厚・研磨・面積で増減(厚いほど手間増) |
どんな場面で使う?用途例
- 通常クロム:バイク・自転車パーツ、インテリア金具、装飾部品など「見た目重視」。
- 硬質クロム:シャフト、ピストンロッド、油圧・空圧シリンダ、射出成形金型、プレス金型、ロール、工具の耐摩耗コート、摩耗した部品の寸法復元(補修)。
設計・依頼のコツ
- 角を少し丸く(面取り/R):角はめっきが付きすぎ・色ムラになりやすい。軽い面取りで安定。
- 磨きの有無を明記:硬質クロムはめっき後に研磨して寸法・面粗さを整えることが多い。必要なら「仕上げ研磨あり」を指示。
- 寸法・公差の考え方:めっきは厚み分だけ寸法が変わる(片側付着)。重要寸法は「めっき後寸法」で指示。
- 治具痕の位置:製品をつかむ痕が小さく残る場合あり。目立たない面を指定すると安心。
- マスキング:ねじ山・嵌合・シール面など、めっきを付けたくない所は図で明確に。
発注前チェックリスト
- 目的:外観重視か、耐摩耗・補修重視か(通常クロム or 硬質クロム)。
- 使用環境:屋外/湿気/油・粉塵/温度など。
- 素材:鉄・SUS・真ちゅう・アルミなど(分かる範囲でOK)。
- 重要寸法:めっき後の狙い寸法、公差、面粗さの目標。
- 仕上げ:研磨の要否、見せ面・非見せ面、治具痕の許容位置。
- 数量・納期:段取りの都合上、まとめ依頼でコスト最適化しやすい。
長持ちさせる使い方
- 摺動部は潤滑を切らさない(油膜が寿命に直結)。
- 使用後は汚れを拭き取り・乾燥(粉塵・水分は摩耗や点サビの原因)。
- 強い研磨剤や硬いタワシは避ける(微細傷→摩耗促進)。
よくある質問(Q&A)
Q. 見た目も耐摩耗も両立したいです。
可能です。硬質クロム+仕上げ研磨で外観と機能の両方を狙えます。重要面だけ研磨するなど、コストと相談しながら設計します。
Q. 摩耗したシャフトを元の寸法に戻せますか?
多くのケースで、硬質クロムを厚付け→研磨の手順で寸法復元が検討できます。素材・摩耗量・要求精度をお知らせください。
Q. どっちが安い?通常クロムと硬質クロム。
形状・膜厚・研磨の有無で変わります。外観のみなら通常クロムが有利なことが多く、耐摩耗・補修なら硬質クロムが適します。
免責・不明点
- 本記事は一般的な目安です。最終仕様・価格・リードタイムは加工会社・品物・数量で変わります。
- 膜厚・硬さ・研磨条件などの統一数値は案件により異なり、本記事では一律値は確認できていません。必要に応じて実測・見積でご確認ください。
- 法令・環境・安全要件は地域差があります。詳細は加工会社の指示に従ってください。