「導電・はんだ付けに強い銅」と「耐食・外観で万能なニッケル」を重ねると、見た目・機能・耐久のバランスを取りやすくなります。どんなときに有効か/発注時のコツをやさしく整理しました。
先に3つのポイント
- 銅で導電・はんだ性を確保し、上にニッケルで変色や拡散を抑える(外観も◎)。
- 用途次第で厚み・順番・仕上げを最適化すると長持ちしやすい。
- 形状配慮(角の面取り・排液穴)とマスキング指定で手戻りとコストを抑える。
複合処理とは?(やさしい概要)
- 基本の順番:下地に銅(Cu) → 上にニッケル(Ni)。必要に応じてさらにトップコート(例:クロムや透明コート)。
- ねらい:銅の「電気的な良さ」を活かしつつ、ニッケルで変色・酸化・拡散の抑制、外観の安定化を狙う。
メリット(代表例)
- はんだ付け性と導電性が確保しやすい:銅層がベース。
- 外観と耐食性が安定:上のニッケルでくすみ・変色を抑制。
- 後工程の幅が広い:Ni上に金・クロム・塗装などを重ねやすい。
- バリア効果:銅が上層(金・はんだなど)に拡散しづらくなるようNiが「仕切り」の役目。
注意点(先に知っておくと安心)
- 厚みの指定で寸法が変わる:めっきは厚み分だけ大きくなるため、めっき後寸法で指示するとスムーズ。
- 角やエッジは厚くなりがち:軽い面取り(R)でムラ・焼け対策。
- 深穴・細溝は薄くなりやすい:必要なら排液・排気の小穴を設計に。
- マスキングの指示:ねじ山・嵌合・シール面など、付けたくない所は図で明記。
- 治具痕の位置:目立たない面を指定すると外観が安定。
どんな時に選ぶ?(目安)
- 電子系・工作用途:導通やはんだ作業があり、しかも見た目や耐久もほしい。
- 外観品:銅の下地で平滑を出し、Niでツヤ・色味を安定させたい。
- 後で金・はんだ・クロムを重ねる:Niが間にあると仕上がりが安定しやすい。
発注前チェックリスト
- 目的:導電/はんだ/外観/耐食 のどれを重視?
- 使用環境:屋外・海沿い・湿気・汗・薬品・温度の条件。
- 素材名:鉄/SUS/真ちゅう/アルミ/樹脂など(分かる範囲でOK)。
- 見せ面/非見せ面:特にキレイにしたい面を指定。治具痕NG面も明記。
- めっき不要(マスク)部:ねじ・嵌合・摺動・シール面など。
- サイズ・数量・希望納期:まとめ依頼で段取り効率が上がりやすい。
仕上がりを長持ちさせるコツ
- 使用後は水拭き→乾拭き:汗・油・水を残さない。
- 海水・薬品が付いたら早めに洗う:変色の予防。
- 強い研磨剤や硬いタワシは避ける:微細傷が変色やサビの起点に。
よくある質問(Q&A)
Q. 「銅だけ」より「銅+ニッケル」の方が良い?
用途次第です。導電・はんだ重視なら銅のみでも目的を満たす場合があります。外観や耐久も重視するなら、上にニッケルを重ねるメリットが大きいです。
Q. どのくらいの厚みが必要?
品物・用途・見た目の基準によって変わります。一律の標準値は案件ごとに異なるため本記事では提示していません。見積時に目的と環境を伝えると最適化しやすいです。
Q. ニッケルの上にさらに金やクロムは重ねられる?
多くのケースで可能です。工程順・膜厚・研磨の有無を含めて、最初に全体像を共有してください。