ネオプレテックス株式会社
コラム
COLUMN
2025.06.06

クロムめっきにおける六価クロム規制と対応技術の最新動向

更新日:2025.11.11

六価クロム(Cr(VI))は強い毒性と発がん性が知られており、EUのREACH・RoHS米国OSHAなどで管理が強化されています。本記事は、いま押さえておきたい規制の要点と、現実的な代替・対策をやさしく整理します。規制は更新が続くため、発注前に最新情報を確認してください。

先に3つのポイント

  • RoHSの基本ライン:電気・電子機器では六価クロム0.1%(均質材料)が上限(EU RoHS)。
  • REACHの動き:六価クロム物質(例:クロム酸/三酸化クロム)は認可対象で、2025年は制限案へ移行の検討が進行
  • 代替の主流:装飾は三価クロム(Cr(III))が拡大、硬質クロムの一部はHVOF溶射などで代替が進展

規制の要点

  • EU RoHS(電気・電子機器向け):六価クロムは0.1%(1000ppm)まで。部品ごとの「均質材料」単位で判定します。
  • EU REACH(化学物質管理):六価クロム物質は認可(Annex XIV)で厳しく管理。2025年時点、より広範な制限制度への移行案が審議中。
  • 米国OSHA(労働安全):作業環境中の六価クロムはPEL=5 μg/m³(8時間TWA)。局所排気・密閉化・PPEが前提。

いま何が変わっている?

  • REACH:認可→制限制度へ置き換え案が進行。用途の限定・厳しいばく露/排出管理の下での継続可否が議論に。ユーザーはサプライヤ経由の適法性確認がより重要。
  • 三価クロムの実用化が加速:装飾分野ではCr(III)で外観・耐食の実用例が増加。機能(硬質)分野は用途で要検証。
  • 硬質クロム代替:HVOF/HVAF溶射やレーザークラッディングの採用拡大(航空・産業機械など)。

発注前に決めておくと安全なこと

  • 用途と優先順位:外観/耐食/耐摩耗/導電/シールドなど。代替可否の判断が早くなります。
  • 規制適合の要否:該当するならEU RoHS適合の明記(均質材料0.1%上限)。
  • 代替の希望:装飾は三価クロム優先、耐摩耗は硬質クロム or HVOFの比較検討など、方針を共有。
  • 形状配慮:角は軽い面取り、深穴は排液穴、マスキング部位(ねじ・嵌合・シール面)を図示。
  • 実効性の確認:見せ面・膜厚の目安・治具痕許容、検査(外観・密着・必要に応じ導電/摩耗)を指定。

代表的な対応技術

  • 三価クロム(Cr(III))装飾:六価クロム由来のリスクを低減。色味は浴設計で調整可能。最新の装飾分野で採用例が増えています。
  • 硬質用途の代替:HVOF/HVAFにより高硬度・耐摩耗・耐食の組み合わせを狙えるケースあり(用途で要評価)。
  • 従来硬質クロム継続時:OSHA等のガイドに沿った局所排気・囲い・個防具の徹底。浴添加剤(発泡抑制等)の規制動向にも注意。

よくある質問(Q&A)

Q. 家庭用の外観パーツは三価クロムで十分?
多くの外観用途で可能です。色味・ツヤの見本を共有すると仕上がりが安定します。

Q. 硬い摺動部はどうする?
硬質クロム vs HVOFを比較。寸法復元や研磨前提、使用環境(腐食・温度)を伝えると、最適な提案が得やすいです。

Q. 六価クロムは今後全面禁止?
EUでは認可から制限への移行案が議論中で、用途限定での継続可否が検討されています。一律の全面禁止時期は本記事時点で確認できていません

免責・不明点

  • 本記事は一般向けの要点整理です。最終仕様・価格・納期・適合は案件と設備で変わります。
  • 規制は更新されます。本文の将来予測や猶予期間の細部は、最新の官報・公式サイトで必ずご確認ください。
  • 関連する補助剤・添加剤の規制(例:PFAS等)も別枠で進行中のため、最新情報に留意してください。

参考情報(一次資料・公式)

  • EU RoHS:六価クロム0.1%(均質材料)の上限、適用除外・評価方法の公式解説
  • EU REACH:認可(Annex XIV)・制限案の審議状況、パブリックコメント情報
  • 米国OSHA:六価クロムの職業ばく露限界(PEL=5 μg/m³, 8h TWA)と管理手段
  • 代替技術:装飾用三価クロム、硬質用途のHVOF/HVAF溶射に関する各種技術ガイド

最終更新:2025年11月11日(日本時間)。本記事は本記事時点の公知情報に基づいています。運用時は最新の公式原典をご確認ください。

投稿者プロフィール
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群馬県高崎市にある老舗のめっき会社。クロムめっき、ニッケルめっき、銅めっきなどを手掛ける。
大型の層を配備しており、長尺物などに対応可能。