ニッケル(Ni)めっきは、高温環境での酸化抑制・拡散バリア・寸法安定に有効です。電解Ni、無電解Ni-P(化学Ni)などの特性と、設計・評価の勘所、実例を要点整理します。
目次
| 種類 | 長所 | 向く用途 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 電解Ni(ワット浴) | 外観・汎用性・膜強度 | 耐熱と外観の両立、機械部品 | 角過厚・内面薄。形状配慮・治具で均一化 |
| 電解Ni(サルファミン酸) | 低内部応力、厚付け安定 | 寸法復元、長尺シャフト | 浴管理が品質に直結 |
| 無電解Ni-P(中〜高P) | 膜厚均一、耐食、加熱で硬化 | 複雑形状、拡散バリア、耐摩耗+耐熱 | 高温で脆化傾向。はんだ性低下に留意 |
メモ:無電解Ni-PはP含有率と加熱条件で硬さ・磁性・導電性が変わります。加熱により結晶化・Ni3P析出が進み、硬化する反面、延性は下がりがちです。
| 現象 | 主因 | 対策 |
|---|---|---|
| 変色・酸化皮膜 | 大気中加熱 | 上層薄Crや保護皮膜、雰囲気制御、色調許容を図面に明記 |
| 密着低下 | 前処理不足、熱膨張差 | 前処理強化(脱脂/活性/ストライク)、膜厚過大を避ける、角R付け |
| 硬化・脆化 | Ni-Pの結晶化・Ni3P析出 | 加熱条件の最適化、局所曲げが生じる構造は避ける |
| 拡散汚染 | Cu→表面への拡散 | Niバリアの連続性確保、必要に応じ多層化 |
(例)
仕様:無電解Ni-P t=○μm(P=中/高)、または電解Ni t=○μm。
熱履歴:出荷前に ○℃×○h の予備加熱を実施(色調変化の許容範囲△E ○以内)。
検査:膜厚(XRF)、外観、密着(テープ)、必要に応じ硬さ(HV)。
形状配慮:エッジR≈××、ねじ・嵌合は除外(マスキング)。
寸法基準:図面寸法はめっき後基準。
Q. 何℃まで使えますか?
雰囲気・時間・層構成で変わるため、一律の保証温度は本記事では確認できていません。想定温度での前後比較試験を推奨します。
Q. Ni-Pは高温で強くなりますか?
ある範囲で硬化しますが、延性が低下する可能性があります。曲げや衝撃がかかる部位は要検討です。
Q. 変色を完全に防げますか?
高温の大気中では難しい場合があります。上層薄Crや保護皮膜、色調許容の取り決めが現実的です。
最終更新:2025年12月3日(日本時間)。
