同じ「ニッケル(Ni)めっき」でも、無電解Ni(化学Ni、Ni-Pなど)と電解Niでは、膜厚分布・外観・硬さ・コスト最適点が異なります。用途別に選定できるよう、設計・検査・図面記載の要点を簡潔に整理します。
| 観点 | 無電解Ni(Ni-P等) | 電解Ni(ワット/サルファミン酸等) |
|---|---|---|
| 膜厚分布 | 均一性が高い(電流不要) | 電流集中で角過厚・内面薄が出やすい |
| 外観 | 半光沢〜グレー調が多い | 光沢・鏡面仕上げが得やすい |
| 硬さ・熱履歴 | 加熱で硬化(Ni3P析出)、延性低下に留意 | 浴・条件で調整。厚付け後の研磨で面性状最適化 |
| はんだ性/導通 | P含有ではんだ性低下傾向→上層Sn/Au等で補正 | 比較的良好(条件依存) |
| 耐食・バリア | 拡散バリア・微細孔埋めに有利 | 多層Niや下地設計で確保 |
| 形状対応 | 深穴・細溝・複雑形状に強い | 治具・補助電極・姿勢最適化が鍵 |
| 工程速度 | 中速〜低速(浴管理で変動) | 高能率化しやすい |
| コスト感 | 均一性対価・浴更新コストが効く | 厚付け・量産で有利になりやすい |
| 環境・更新 | 浴の老化・P管理、前処理清浄度に敏感 | 添加剤管理・ろ過で安定。スラッジ/有機物管理が重要 |
(例A:無電解Ni)
仕様:無電解Ni-P t=○μm(P=中/高)。
検査:膜厚(XRF)測定点A/B/C、外観、必要に応じ硬さ・密着(テープ)。
形状配慮:エッジR≈××、深穴は排液/排気設計。
寸法:図面寸法はめっき後基準。
(例B:電解Ni)
仕様:半光沢Ni t=○μm+光沢Ni t=○μm。
検査:膜厚(XRF)、外観(見せ面等級○)。
治具・測定:測定点A/B/C、エッジ±××mm・ねじ・嵌合は除外。
仕上げ:必要に応じラップ/研磨でRa=○.○ μm。
| 症状 | 主因の例 | 対策 |
|---|---|---|
| 角過厚・焼け(電解Ni) | 電流集中 | 面取りR、補助電極、低電流立上げ、姿勢最適化 |
| 内面が薄い(電解Ni) | 回り込み不足 | 補助電極挿入、極間調整、排液/排気穴 |
| 剥離・ブリスター | 前処理不足、搬送遅延 | 脱脂・活性強化、ストライク採用、搬送短縮 |
| はんだ不良(無電解Ni-P) | P含有・酸化 | 上層Sn/Au、活性化の最適化、加熱履歴管理 |
Q. コストはどちらが安い?
量・形状・外観要求で変わります。厚付け・量産・外観重視は電解Niが有利な場面が多く、複雑形状・均一性重視は無電解Niが妥当です。
Q. 無電解NiのP含有率はどう決める?
耐食・バリア優先なら中〜高P、磁性やはんだ性に配慮する場合は低〜中Pを検討します(具体的な一律値は装置・薬液で異なり本記事では提示していません)。
Q. 最終的に迷ったら?
小片・治具検証で膜厚分布・外観・密着を確認し、図面の測定点・合否基準を固めてから本番に進みます。
最終更新:2025年12月4日(日本時間)。
