ネオプレテックス株式会社
コラム
COLUMN
2025.10.17

銅めっきへの亜鉛メッキ併用処理 ― 防錆+導電性の融合設計

更新日:2025.12.06

高い導電性・はんだ性を担う銅めっき(Cu)と、犠牲防食で鋼材を守る亜鉛めっき(Zn/Zn-Ni)を目的別に組み合わせると、屋外・車載・電装周辺で防錆と電気特性の両立が可能です。本記事は、層構成の考え方・図面指定のコツ・形状/接触部の対策を要点整理します。

ポイント

  • 役割分担が基本防錆はZn(またはZn-Ni)、導電・接触はCu(必要に応じSn/Ag上層)で受け持つ。
  • 選択被覆が王道接点部はCu露出、非接点部はZn系で保護(マスキング・後追いめっきで実現)。
  • 化成処理は導電性とトレードオフ三価クロメート等は耐食↑だが表面抵抗↑。接点は無成膜/低抵抗仕様で指定する。

併用パターンと使い分け

パターン層構成イメージ狙いポイント
A:接点選択露出基材(鋼)→Cu(全面)→マスク→Zn or Zn-Ni(非接点部)接点:低接触抵抗/非接点:高耐食マスク精度、境界段差と電食の管理
B:後追いCuランド基材(鋼)→Zn or Zn-Ni(全面)→部分Cu二次めっき(接点)→必要に応じSn/Ag耐食を確保しつつ接点だけ低抵抗化前処理でZn表面活性化、密着評価を追加
C:Cu母材の防食補助基材(Cu/銅合金)→Cu整面→Znフラッシュ(締結/異種接触部限定)鋼ボルト等との異種接触腐食の抑制薄膜・限定部位、必要なら後処理最小限
D:Zn-Ni+Cu薄層の導通補正基材(鋼)→Zn-Ni(全面)→薄Cu(接点部のみ)→Sn/Ag仕上げ長期耐食と安定した接触抵抗の両立多層境界の密着・拡散管理、評価強化

メモ:Zn系の三価クロメートや封孔は表面抵抗が上がりやすい一方で耐食性は向上します。接点ランドは無成膜(デオキシダイズのみ)低抵抗タイプを明示します。

電気特性と耐食性の設計要点

  • 接触抵抗:Cu露出 or Sn/Ag仕上げが低抵抗。Znクロメート面は抵抗高め。
  • 電食(ガルバニック):Cuと鋼を直接接触させると鋼側が不利。Znを犠牲層にして保護。
  • 拡散・変色:Cu↔Znの相互作用で色調変化が起こることあり。薄層・限定部位化で抑制。
  • はんだ性:Cu露出やSn仕上げが有利。Znクロメートは前処理が必要。

工程別の実務ポイント

工程要点チェック
前処理脱脂→活性→(必要に応じ)ストライクNi/Cu密着不良・ブリスターの予防、搬送短縮
一次めっきCuまたはZn/Zn-Niをベースに目的(導通 or 防錆)に合う順番・浴種
選択被覆精度の高いマスキング/部分電極境界の段差・ピンホール・毛羽立ち
後処理接点は無成膜または低抵抗化成、非接点はクロメート/封孔接触抵抗・耐食の両評価

図面・見積にそのまま使える雛形(コピペOK)

(例)
目的:接点部の低接触抵抗+非接点部の耐食性確保。
層構成:[非接点部] Zn-Ni t=○μm(三価クロメート※低抵抗不可)/[接点部] Cu露出(必要に応じ Sn t=○μm)。
マスキング:接点ランドφ○mmを全面Cu露出で指定。境界±○mmは段差許容。
検査:膜厚(XRF)測定点A/B/C、接触抵抗Rc≤○mΩ(荷重××N、○回測定)、塩水噴霧○h赤錆無(非接点面)。
注意:ねじ・嵌合・シール面は除外。検査距離・照度を固定。

形状/接点の注意点(早見表)

部位起こりやすい事象対策
エッジ・角過厚・焼け・段差強調面取りR、低電流立上げ、補助電極
接点ランド酸化・抵抗上昇Cu露出指定、軽い活性→Sn仕上げ、保護キャップ
深穴・内面厚み不足・排液不良姿勢・極間最適化、排液穴、無電解の併用検討
異種金属締結部電食・赤錆Znを介在させる、絶縁/防水、グリス/シール剤

評価フロー(再現性重視)

  • 膜厚・外観:XRF、ピット/ムラの基準化。
  • 接触抵抗:荷重・面積・回数・環境(温湿度)を固定。
  • 耐食:NSS/CASS等を用途に合わせ選定(接点は試験後Rc再測)。
  • 密着(簡易):テープ/曲げ。多層部は境界で重点確認。

Q&A(短く)

Q. Znクロメート面は導電しますか?
導電はしますが接触抵抗は高めです。接点にはCu露出やSn/Ag仕上げを推奨します。

Q. Cuの上にZnを直接のせられますか?
可能です。浴・前処理次第で密着は確保できますが、色調変化・境界電食に留意し、限定部位・薄膜運用が無難です。

Q. Zn-Niを選ぶメリットは?
通常Znより耐食性が高く、熱に対しても安定です。接点部は別途Cu/Snなどで低抵抗化します。

免責・不明点

  • 本記事は一般的指針です。膜厚・成分・処理条件・価格・納期は品物・設備で変動します。
  • 接触抵抗・耐食試験時間などの一律標準値は用途差が大きく、本記事では確認できていません。実機条件での事前評価を推奨します。
  • 化成処理・環境規制は改定されます。運用時は最新の原典をご確認ください。

最終更新:2025年12月6日(日本時間)。

投稿者プロフィール
ネオプレテックス株式会社
ネオプレテックス株式会社
群馬県高崎市にある老舗のめっき会社。クロムめっき、ニッケルめっき、銅めっきなどを手掛ける。
大型の層を配備しており、長尺物などに対応可能。