ネオプレテックス株式会社
コラム
COLUMN
2025.11.28

めっき工程の自動化で変わる生産現場|品質安定とコスト削減の両立

更新日:2025.12.13

治具搬送・薬液管理・検査を自動化すると、ばらつき低減(品質安定)人件費・歩留まり改善(コスト削減)を同時に達成できます。本記事は、めっきラインの自動化ポイントを「工程」「計測」「品質保証」「投資回収」の順に整理し、図面・見積に流用できる雛形を提示します。

ポイント

  • 動かす順序を固定化(搬送姿勢・浸漬時間・リンス回数)=ロット間再現性の源泉。
  • オンライン計測×アラート(pH・温度・金属濃度・ORP・流量)で「異常の早期是正」。
  • 自動外観/膜厚検査の標準化が歩留まりとクレーム率を同時に下げる。

自動化の適用領域(早見表)

領域自動化対象狙い要点
前処理搬送ロボット、タイマー制御、超音波/噴流洗浄脱脂・活性の再現浸漬秒数と液温の固定、キャリーオーバー低減
電解/無電解電流・電圧・温度・pH・濃度の自動制御膜厚均一・欠陥低減立ち上げランプ制御、補助電極/極間の自動調整
搬送・治具AGV/コンベア、姿勢トラッキング人的差の排除滴下時間・排液角度の規格化
検査インラインXRF、画像検査(傷・ピンホール)全数/準全数化A/B/C測定点の標準化、照度・距離の固定
薬液管理連続ろ過、補給自動化、活性炭・イオン交換の自動運転浴劣化の抑制濃度・導電率・ORPの上下限アラーム

KPIとダッシュボード設計

  • 不良率(ppm/%):欠陥別(剥離・ピンホール・焼け)に週次で可視化。
  • 膜厚Cpk:XRFの測定点A/B/Cで工程能力を監視。
  • タクト・稼働率OEE:可動・性能・品質を分解表示。
  • 薬液コスト/品:濃度・補給量・廃液量を自動集計。
  • 回収率:金属回収(スラッジ/ろ過残渣)を金額換算。

品質安定のカギ(自動化で外さないポイント)

  • 時間の管理:浸漬・滴下・搬送インターバルをミリ秒〜秒で固定。
  • 温度の管理:±許容範囲を超えたら自動停止+責任者コール。
  • 濃度の管理:オンライン滴定/比色・導電率の二重化で信頼性確保。
  • 清浄度の管理:リンスの導電率監視、ろ過差圧でカートリッジ交換を予知。
  • 電気条件:電流密度プロファイルを装置側でテンプレ化。

図面・見積にそのまま使える雛形(コピペOK)

仕様:自動化めっきライン(前処理〜めっき〜洗浄〜乾燥)。搬送タクト=○○秒、姿勢=治具No.○、滴下=○秒。
薬液管理:温度○±○℃、pH○.○±○、金属濃度○±○ g/L、ORP○±○ mV、連続ろ過△μm。
膜厚:XRF測定点A/B/C、目標t=○ μm、下限=○ μm(ISO表記に準拠)。
外観検査:照度○lx、距離○cm、角度○°、等級票No.○。
トレーサビリティ:ロットID・治具ID・計測ログ(CSV)を添付。
除外:ねじ・嵌合・シール面はめっき除外(マスキング)。

投資回収(ROI)試算の枠組み

  • 効果側:人件費削減、歩留まり改善、不良返品削減、薬液・エネルギー最適化、稼働率向上。
  • コスト側:装置費、据付・改修、保守契約、消耗品、教育、停止損。
  • 試算式(例):年次純効果=(人件費削減+不良・返品減+薬液削減+生産増の粗利)−(減価償却+保守+金利)。

段階導入のすすめ

  • Phase1:計測の自動化(ログ化・アラート)。
  • Phase2:搬送・タイミングの自動化(ボトルネック工程)。
  • Phase3:検査の自動化(XRF/画像、合否判定)。
  • Phase4:最適化(AIで条件自動補正、予知保全)。

よくある不具合と対策(自動化前後での比較)

症状従来原因自動化の対策
膜厚ばらつき浸漬時間・姿勢の人差搬送タクト固定、姿勢トラッキング、電流プロファイル自動制御
ピンホール/ブリスター前処理不足、搬送遅延タイマー連結、移送最短化、活性条件の上限下限監視
角の焼け電流集中、立ち上げ不安定自動ランプ制御、補助電極の自動位置決め
薬液劣化濃度・有機物管理の遅れオンライン濃度推定、活性炭処理の自動投入・アラート

Q&A(短く)

Q. どこから自動化すべき?
最初は計測とログ化です。異常検知ができれば、次に搬送や検査の自動化へ拡張しやすくなります。

Q. 全数XRFは必須?
量と形状によります。準全数+抜取で開始し、リスク部位のみ全数にするハイブリッド運用が現実的です。

Q. 人は要らなくなる?
いいえ。自動化は異常対応・改善・保全に人を再配置します。技能はむしろ重要になります。

免責・不明点

  • 本記事は一般的な指針です。装置仕様・安全要件・規格適合は各社設備・製品で異なります。
  • 具体的な数値閾値(温度・濃度・タクト等)は現場条件に依存し、本記事では一律値を確認できていません。試作とFMEAで確定してください。

最終更新:2025年12月13日(日本時間)。

投稿者プロフィール
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ネオプレテックス株式会社
群馬県高崎市にある老舗のめっき会社。クロムめっき、ニッケルめっき、銅めっきなどを手掛ける。
大型の層を配備しており、長尺物などに対応可能。