ネオプレテックス株式会社
コラム
COLUMN
2026.01.23

クロム・ニッケル・銅めっきはどこで決まる?仕様決定の考え方

更新日:2026.02.02

「クロム・ニッケル・銅、どれを選べばいいのか」「膜厚や層構成はどう決めるのか」。めっき仕様は“経験則”だけで決めると、外観クレーム・早期腐食・接触抵抗増・寸法不良につながります。仕様決定は、用途→環境→素材→層構成→検査の順で詰めるとブレません。本記事では、クロム(Cr)・ニッケル(Ni)・銅(Cu)それぞれの“決まり方”をテンプレ化します。

仕様はこの5つで決まる

  • ①用途の優先順位(外観/耐食/耐摩耗/導電/はんだ)
  • ②使用環境(塩分・薬品・温湿度・摩擦・電流・温度)
  • ③素材と履歴(材質・熱処理・既存皮膜・粗さ)
  • ④層構成と除外部位(下地→バリア→仕上げ、マスキング)
  • ⑤検査と合否基準(膜厚、外観、耐食、接触抵抗、密着)

まずは役割を整理:Cr・Ni・Cuは何を担当する?

めっき主な役割仕様が決まるポイント
クロム(Cr)外観(色調・ツヤ)/表面硬化(耐摩耗)/清掃性装飾か硬質か、外観基準、摺動条件、研磨の要否
ニッケル(Ni)耐食の土台/拡散バリア/下地(外観の決定層)単層か多層か、均一膜厚の必要性(無電解Ni-P)、熱履歴
銅(Cu)導電・はんだ性/平滑化下地/熱拡散接触抵抗の目標、酸化対策(Sn/Au等上層)、電食対策

仕様決定フロー

Step1:用途の優先順位を決める(1位〜3位)

  • 外観(色調・ツヤ)
  • 耐食(屋外・海沿い・結露)
  • 耐摩耗(摺動・接触)
  • 導電・接点(接触抵抗、EMI)
  • はんだ付け(濡れ、拡散)

Step2:環境条件を数行で固定する

  • 温度:常用○℃/ピーク○℃
  • 湿度:結露あり・なし
  • 塩分:海沿い/融雪剤/塩水
  • 薬品:洗浄剤(酸・アルカリ)/溶剤
  • 摩擦:相手材、荷重、速度、潤滑
  • 電気:電流、電圧、許容抵抗、接触回数

Step3:素材と履歴を確定する

  • 材質記号(例:S45C、SUS304、ADC12、C2680など)
  • 熱処理の有無(高強度材は水素脆化リスク)
  • 既存皮膜(黒染め・リン酸塩・アルマイト等)の扱い(除去してめっき/上から不可)
  • 表面粗さ(Ra)と加工目方向(外観や摺動に影響)

Step4:層構成(下地→バリア→仕上げ)を選ぶ

目的層構成の例決め手
外観+耐食半光沢Ni+光沢Ni+薄Cr色調見本、外観等級、耐食試験条件
耐摩耗(摺動)下地Ni→硬質Cr(研磨)荷重・速度・潤滑、粗さ(Ra)と寸法精度
導電・接点Niバリア→Cu薄層→Sn/Au接触抵抗Rc、挿抜回数、酸化・硫化環境
複雑形状の均一膜厚無電解Ni-P(必要に応じ上層)深穴・内面の均一性、熱履歴での物性変化
防錆(鋼)+接点Zn/Zn-Ni+接点だけCu/Sn電食対策、接点は低抵抗仕様、選択被覆の可否

注意:膜厚や成分の“統一標準値”は用途・設備で変わるため、本記事では一律値は提示しません。試験条件とセットで最小必要厚を合意します。

Step5:除外部位と「めっき後寸法」を決める

  • ねじ山、嵌合、シール面、導通不要面は除外(マスキング)を図示
  • 寸法は原則めっき後寸法で指示(両側で2×膜厚分変化)
  • 測定点A/B/Cを固定(角・内面の厚みムラを前提に)

Step6:検査と合否基準を固定する

  • 膜厚:XRFでA/B/C点、下限値を明記
  • 外観:照度・距離・角度・等級票で判定
  • 耐食:塩水噴霧・循環試験など、用途に合う試験を選び時間と判定を明記
  • 接触抵抗:荷重・回数・温湿度を固定して評価
  • 密着:テープ/曲げ等、方法と条件を事前合意

設計者が迷いやすい「判断の分岐点」

  • 外観が最優先:Crは最終色、Niが外観の土台。見本で合意し、見せ面を図示。
  • 長寿命が最優先:多層Ni・バリア層・電食対策を先に設計し、耐食試験条件を明記。
  • 接点が最優先:接触抵抗の条件(荷重・回数)を決め、表層(Sn/Au)の選定へ。
  • 複雑形状:無電解Ni-Pを優先候補にし、必要なら上層で機能付与。

図面にそのまま貼れる指定テンプレ

目的:優先順位①○○ ②○○ ③○○。
素材:○○(熱処理:有/無、既存皮膜:有/無)。
層構成:○○→○○→○○(膜厚:各t=○μm)。
膜厚:XRFで測定点A/B/C、下限:t≥○μm(エッジ±××mm除外)。
寸法:図面寸法はめっき後基準。
除外:ねじ山・嵌合・シール面はめっき除外(マスキング)。
外観:見せ面=添付図、照度○lx、距離○cm、等級票No.○。
耐久:塩水噴霧○h、接触抵抗Rc≤○mΩ(荷重××N、××回)など。

Q&A

Q. 「とりあえずNi」ではダメですか?
ダメではありませんが、目的が耐食なのか、外観なのか、バリアなのかでNiの種類(単層/多層/無電解)が変わります。用途優先順位と環境条件を先に固定してください。

Q. 膜厚の標準値は?
用途・環境・層構成で変わるため、一律の標準値は本記事では確認できていません。試験条件とセットで最小必要厚を合意してください。

免責・不明点

  • 本記事は仕様決定の一般フレームです。膜厚・層構成・試験条件は製品仕様と設備で変わります。
  • 規格・法令・顧客要求は改定されます。実運用時は最新の原典・要求事項をご確認ください。

最終更新:2025年12月28日(日本時間)。

投稿者プロフィール
ネオプレテックス株式会社
ネオプレテックス株式会社
群馬県高崎市にある老舗のめっき会社。クロムめっき、ニッケルめっき、銅めっきなどを手掛ける。
大型の層を配備しており、長尺物などに対応可能。