ネオプレテックス株式会社
コラム
COLUMN
2026.01.30

めっき前提設計とは何か?後工程トラブルを防ぐ設計配慮の基本

更新日:2026.02.02

めっきは「表面だけの処理」に見えて、実は形状・寸法・接合・検査まで含めた“設計”で結果が決まります。めっき前提設計とは、めっき工程で起きる厚みムラ・密着不良・外観差・電食・嵌合不良を、図面段階で先回りして潰す考え方です。本記事では、後工程トラブルを減らすための基本配慮をチェックリスト化します。

めっき前提設計の3原則

  • ①「付く/付けない」を決める:機能面・接点・シール面・ねじなど、めっきの要否を図面で確定。
  • ②「厚みムラ」を前提にする:角は厚く、内面は薄い。測定点と許容をセットで決める。
  • ③「めっき後寸法」で設計する:嵌合・ねじ・摺動は、めっきで寸法が変わる前提で公差を組む。

なぜ起きる?後工程トラブルの典型パターン

トラブル設計側の原因めっき前提設計の対策
嵌合が入らない/ねじが固いめっき後寸法の未考慮、除外部位未指定めっき後寸法で公差設計、ねじ・嵌合は除外/後加工を明記
端部だけ焼け・過厚鋭角エッジ、電流集中しやすい形状面取りR、補助電極前提の治具スペース確保
内面が薄くて性能不足深穴・盲穴・狭隙の設計排液/排気穴、流路径の余裕、無電解の併用検討
外観ムラ/治具痕が目立つ見せ面の指定なし、治具接点位置の未配慮見せ面/非見せ面を図示、治具痕許容面を指定
密着不良(剥がれ)既存皮膜や熱変色を残したまま皮膜除去の指示、前処理条件の前提化(ストライク含む)
電食・早期腐食異種金属接触、停滞水が残る形状絶縁・排水設計、材質組合せの見直し、バリア層追加

設計で効く基本配慮

1) 形状:角・穴・隙間をどうするか

  • 角はR付け:角は過厚・焼けの起点。Rを付けるだけで安定。
  • 深穴・盲穴は排液/排気:液溜まり・薄付きを防ぐ。設計で抜け道を作る。
  • 狭隙は避ける:洗浄が届かず、密着不良や腐食の起点になりやすい。
  • 治具スペースを確保:つかむ場所がないと見せ面に痕が出る。

2) 寸法:めっき後寸法・公差・後加工

  • 寸法は原則「めっき後」基準:特に嵌合・ねじ・摺動部。
  • 膜厚分で変化する:両側で2×膜厚。薄膜でも嵌合には効く。
  • 後加工の要否を決める:研磨/ラップで仕上げるなら、その前提を図面に明記。

3) 仕様:層構成と“付けない部位”

  • 層構成を省略しない:(例)Ni/CrならNiの有無、半光沢/光沢の指定。
  • 除外部位を図示:ねじ山・嵌合・シール面・接点など。
  • 接点は低抵抗仕様:クロメートや封孔は抵抗が上がる場合があるため、接点ランドは別指定。

4) 検査:測定点と合否を先に決める

  • 膜厚測定点A/B/Cを固定:どこを測るかが曖昧だと合否が決まらない。
  • 下限値を明記:目標だけでなく最小厚(下限)を指定。
  • 外観の判定条件:照度・距離・等級票でブレを無くす。

図面にそのまま貼れる「めっき前提設計」テンプレ

目的:優先順位①○○ ②○○ ③○○。
素材:○○(履歴:熱処理/既存皮膜の有無)。
層構成:○○→○○→○○(膜厚:各t=○μm)。
寸法:図面寸法はめっき後基準(嵌合・ねじ・摺動部)。
除外:ねじ山・嵌合・シール面はめっき除外(マスキング)。
形状:エッジR≈××、排液/排気穴あり(位置図参照)。
測定:XRFで測定点A/B/C、下限t≥○μm(エッジ±××mm除外)。
外観:見せ面=添付図、照度○lx、距離○cm、等級票No.○。

5分でできる設計レビュー(最小版)

  • 見せ面・非見せ面が図で決まっている
  • ねじ・嵌合・シール面の“付けない”指定がある
  • 角R、排液/排気、狭隙回避など形状配慮がある
  • めっき後寸法・公差・後加工の前提が書かれている
  • 膜厚の下限値と測定点A/B/Cがある

Q&A

Q. Rはどのくらい付ければいい?
用途・サイズで最適値が変わるため、一律値は本記事では確認できていません。ただし「角を残す」より「小さくてもRを付ける」方が、焼け・過厚・剥離のリスクは下がります。

Q. 深穴はめっきできますか?
可能ですが薄くなりやすいです。排液/排気、姿勢、補助電極、無電解併用などを前提に設計します。

Q. めっき後に研磨する前提でも良い?
良いです。重要寸法が厳しい場合は、めっき→研磨/ラップの前提を図面に明記すると安定します。

免責・不明点

  • 本記事はめっき前提設計の一般指針です。最適な膜厚・形状R・試験条件は製品仕様と設備で変わります。
  • 規格・法令・顧客要求は改定されます。実運用時は最新の要求事項をご確認ください。

最終更新:2025年12月28日(日本時間)。

投稿者プロフィール
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ネオプレテックス株式会社
群馬県高崎市にある老舗のめっき会社。クロムめっき、ニッケルめっき、銅めっきなどを手掛ける。
大型の層を配備しており、長尺物などに対応可能。