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COLUMN
2026.06.19

めっき図面の読み方入門|発注時に確認したい記号と指示内容

更新日:2026.06.19

めっき図面は、めっき種や膜厚だけでなく、処理範囲、見せ面、下地、後処理、マスキング、検査条件などを読み取るための重要な資料です。しかし、図面上の記号や略号だけを見て発注すると、「どこまで処理するのか」「膜厚はどこで測るのか」「外観基準は何か」が曖昧になり、後工程でトラブルになることがあります。本記事では、めっき図面を読むときに押さえたい基本と、発注時に確認すべき指示内容を実務目線で整理します。

図面は5点を見る

  • 1)めっき種:亜鉛、ニッケル、クロム、銅など、何のめっきか
  • 2)膜厚:何μm必要か、最小膜厚か平均膜厚か
  • 3)処理範囲:全面処理か、部分処理か、マスキングが必要か
  • 4)外観・見せ面:どの面を重視するか、治具痕の許容はあるか
  • 5)検査条件:膜厚測定点、外観判定、耐食・密着などの評価条件

図面指示の基本

めっき図面では、材料や寸法とは別に、表面処理としてめっきの種類や膜厚、後処理、処理範囲などが記載されます。会社や業界によって表記方法は異なりますが、発注側が見るべきポイントは共通しています。

特に注意したいのは、記号が書いてあるだけでは実務条件が十分に伝わらない場合があることです。たとえば「Ni 5μm」と書かれていても、測定位置、下地の有無、外観基準、耐食要求が書かれていなければ、発注側と加工業者で解釈が分かれる可能性があります。

よく見る指示内容

図面で見る項目意味発注時の確認ポイント
めっき種どの金属皮膜を付けるかNi、Cr、Cu、Znなどの種類と、用途に合っているか
膜厚めっき膜の厚さ最小膜厚か平均膜厚か、測定点はどこか
下地表層の下に入るめっき層密着、平滑化、耐食など、下地の役割を確認する
後処理クロメート、封孔、ベーキングなど耐食、外観、水素脆性対策などの目的を確認する
処理範囲どこにめっきを付けるか全面か部分か、マスキングの範囲を図示する
外観指示見せ面、色味、光沢、ムラの基準写真基準、照度、距離、角度を確認する
検査指示膜厚・外観・耐食などの確認方法測定点、抜き取り数、判定基準を確認する

記号だけで判断しない

めっき図面では、略号や記号で指示されることがあります。ただし、図面記号は社内規格・顧客規格・JIS・ISOなどのどれを前提にしているかで意味が変わる場合があります。そのため、初回発注時は「この記号はどの規格・仕様書に基づくものか」を確認することが大切です。

  • 社内記号:会社独自の表記。加工業者に伝わらない場合がある
  • 顧客規格:顧客指定の処理や試験条件がある場合がある
  • JIS/ISO表記:規格番号や等級、皮膜構成まで確認が必要
  • 旧図面:古い表記や廃止された処理が残っている場合がある

膜厚の読み方

膜厚は、めっき図面で最も重要な指示のひとつです。ただし、「5μm」「10μm」と書かれていても、それが最小膜厚なのか、平均膜厚なのか、測定点がどこなのかが不明だと、合否判定が割れやすくなります。

  • 最小膜厚:薄くなりやすい部位も含めて満たすべき膜厚
  • 平均膜厚:全体の平均値。弱点部位を見逃すことがある
  • 測定点:A/B/Cなど図面上で位置を固定する
  • 部位差:どの程度のばらつきまで許容するか決める

特に奥部、影になる部位、エッジ、ねじ部、接触部などは膜厚が変わりやすいため、発注時に測定点を確認しておくとトラブルを減らせます。

処理範囲の読み方

めっきは「全面に付ける」と思われがちですが、実際には部分めっき、マスキング、接点位置、治具痕の許容などが関係します。図面に処理範囲が明確に書かれていない場合は、必ず確認が必要です。

  • 全面処理:製品全体にめっきを付ける指示
  • 部分処理:特定部位だけめっきを付ける指示
  • マスキング:めっきを付けない部位を保護する作業
  • 接点位置:治具で接触する位置。外観に影響する場合がある
  • 治具痕:許容位置・許容サイズを事前に決める

見せ面の確認

外観品質が重要な製品では、「見せ面」を図面や写真で明示することが重要です。見せ面が曖昧だと、加工業者は通常の掛け方で処理し、発注側が想定していない位置に治具痕やムラが出ることがあります。

  • 見せ面をA面・B面などで指定する
  • 治具痕が出てよい位置・出てはいけない位置を示す
  • 外観判定の照度・距離・角度を決める
  • OK/NG境界の写真基準を用意する
  • 色味や光沢が重要な場合はマスターサンプルを用意する

後処理の読み方

めっき図面には、めっき後の処理が記載されることがあります。たとえば、耐食性を高める処理、色味を調整する処理、水素脆性対策のベーキングなどです。後処理は品質や納期に影響するため、目的と条件を確認します。

  • クロメート等:耐食性や外観に関わる後処理
  • 封孔:孔や欠陥部からの腐食を抑える目的で使われる場合がある
  • ベーキング:水素脆性リスクを下げる目的で行う場合がある
  • 指定なし:通常処理でよいのか、後処理不要なのか確認する

発注前の確認項目

図面を読んだあと、発注前に確認すべき項目をまとめます。ここを確認しておくと、加工後の「思っていた仕上がりと違う」を減らせます。

  • 図面のめっき記号は、どの規格・仕様書に基づくものか
  • めっき種、下地、後処理の指示は明確か
  • 膜厚は最小膜厚か平均膜厚か
  • 膜厚測定点A/B/Cは図示されているか
  • 処理範囲とマスキング範囲は明確か
  • 見せ面と治具痕NG位置が指定されているか
  • 外観判定条件と写真基準はあるか
  • 耐食・密着・機能試験の条件は決まっているか
  • 前工程情報(素材、加工油、粗さ、熱処理)は共有できるか

よくある読み違い

  • 膜厚を平均で解釈する:最小膜厚が足りず、奥部から腐食する
  • 処理範囲を全面と思い込む:部分めっきやマスキングの認識がズレる
  • 見せ面が未指定:治具痕やムラが重要面に出る
  • 後処理を見落とす:耐食性や外観が想定と違う
  • 古い図面を使う:廃止処理や旧表記が残っている

すぐ使えるチェックリスト

  • めっき記号・略号の意味を、規格番号または社内仕様で確認した
  • めっき種、下地、後処理、膜厚が明確になっている
  • 膜厚は測定点A/B/Cと最小膜厚で確認している
  • 処理範囲、非処理範囲、マスキング範囲を図示できている
  • 見せ面と治具痕NG位置が明確になっている
  • 外観判定条件(照度/距離/角度)と写真基準がある
  • 耐食・密着・機能試験の条件が決まっている
  • 素材ロット、加工油、粗さ、熱処理など前工程情報を共有できる
  • 古い図面や旧表記ではないか確認した

専門用語ミニ解説

  • 膜厚:めっき膜の厚さ。μm(マイクロメートル)で示されることが多いです。
  • 下地めっき:表層の下に入るめっき層。密着、平滑化、耐食などの役割を持ちます。
  • 見せ面:外観品質が特に要求される面。治具痕やムラの許容が厳しくなります。
  • マスキング:めっきを付けたくない部位を保護する作業です。
  • 後処理:めっき後に行う処理。耐食性や外観、機能に関わります。

免責・確認できていない点

  • めっき記号や表記方法は、JIS、ISO、顧客規格、社内規格によって異なる場合があります。本記事では一般的な読み方を整理しており、個別図面の正式解釈は発注先・顧客仕様・適用規格で確認してください。
  • 膜厚、試験条件、後処理の要否は、めっき種、素材、用途、使用環境で変わります。初回発注時は、図面だけでなく仕様書・打ち合わせ内容も合わせて確認してください。

参考情報(情報源)

  • ISO 27830(Metallic and other inorganic coatings – Requirements for the designation of metallic and inorganic coatings) https://standards.iteh.ai/catalog/standards/cen/ce38d08e-4c72-4053-964d-156ea85050f4/en-iso-27830-2017
  • ISO 4042:2022(Fasteners — Electroplated coating systems) https://www.iso.org/obp/ui/fr/
  • JIS H 0404(電気めっき記号に関する規格。適用可否は図面・仕様書で確認)
  • ISO 9001:2015(品質マネジメントシステム要求事項:不適合・是正処置の考え方の基盤) https://www.iso.org/standard/62085.html

最終更新:2026年6月19日(日本時間)。

投稿者プロフィール
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群馬県高崎市にある老舗のめっき会社。クロムめっき、ニッケルめっき、銅めっきなどを手掛ける。
大型の層を配備しており、長尺物などに対応可能。