本記事は「クロムめっきの膜厚設計」を短時間で把握したい方向けに、用途別の厚み目安と耐久性を左右する実務ポイントを、規格や公開資料に基づいて整理したものです。最後に参考情報と免責をまとめてあります。
目次
外観と耐食性が目的。耐食性はニッケル層の総厚・多層化が鍵で、クロムは微小割れ/多孔により電位差を分散し、下地Niの局部腐食集中を抑えます。屋外・自動車外装では半光沢Ni+光沢Ni等の多層Ni+Cr 0.25〜0.3µmが実務の起点です。
耐摩耗・寸法復元・焼付き防止が目的。接触圧・摩耗量・仕上げ研磨を考慮し、10〜50µm(一般機械)、50〜200µm(ロール・シリンダ等の復元)を目安に設定。図面はCr50hrのように厚さとタイプを記号で指定します。
※最終仕様は基材・形状・前処理・環境・検査条件で変わります。以下は規格・公開資料に基づく「起点」の目安です。
| 用途 | 目安の膜構成・厚み | 補足 | 
|---|---|---|
| 室内装飾部品 | Ni 10〜20µm+Cr 0.25〜0.3µm | 微小割れ/多孔の管理が有効 | 
| 屋外・自動車外装 | Ni 20〜30µm(多層)+Cr 0.3µm | 半光沢Ni+光沢Ni 等の多層Niが一般的 | 
| 工業用(耐摩耗) | Cr 10〜50µm | 相手材・面圧・摩耗量で最適化 | 
| 工業用(寸法復元) | Cr 50〜200µm+研磨代 | 必要により更に厚付け | 
Fe/Cu20/Ni30/Cr0.3(microcracked) = 銅20µm+ニッケル30µm+クロム0.3µm(微小割れ)Fe//Cr50hr = 鉄基材にハードクロム 50µm(regular)・装飾Ni/Crの指定(多層Ni・微小割れCr 等):ISO 1456:2009
・装飾Ni/Crの最低膜厚例(Cr 0.25µm など):ASTM B456
・工業用(ハード)クロムの表記・評価(例:Cr50hr):ISO 6158:2018
・断面法(局所膜厚測定):ISO 1463:2021 / XRF:ISO 3497
・塩水噴霧の考え方:ISO 9227 / ASTM B117
・装飾Ni/Crの実務解説:Nickel Plating Handbook(Nickel Institute)
免責:本記事は公開規格・資料に基づく設計の出発点を示すもので、特定用途での性能を保証するものではありません。最終仕様は使用環境・基材・工程能力・検査条件を踏まえて図面・受入基準として関係者間で合意してください。規格や法令・指針は改定されるため、最新版の確認をお願いします。個別製品・現場条件の詳細データについては確認できていません。
