ネオプレテックス株式会社
コラム
COLUMN
2025.06.20

銅めっきにおける導電性改善技術とその応用業界

更新日:2025.11.14

銅(Cu)めっきは「電気をよく通す」「はんだ付けがしやすい」ことで広く使われます。本記事では、導電性(抵抗の低さ)を高めるための実務ポイントと、実際に活躍する業界・用途を整理します。

3つのポイント

  • 均一でピュアな銅層(不純物・過添加を避ける)ほど抵抗は下がる
  • 厚みと形状の最適化(角の面取り・深穴の回り込み)で実効断面を確保
  • 表面管理(酸化膜対策・接触面の仕上げ)で接触抵抗を抑える

導電性を高める実務テクニック

項目狙いポイント
前処理の徹底密着と連続皮膜脱脂→活性化→(必要に応じ)下地処理。残渣や油分は局所的な高抵抗の原因
浴管理(酸性硫酸銅など)低抵抗の析出Cu・酸・塩化物・光沢剤を適正範囲に。過度の有機添加は抵抗↑の要因
厚み設計断面積↑=抵抗↓配線・導体は必要な最小抵抗から逆算。深穴・溝は回り込み限界を考慮
粒径・結晶制御散乱低減粗すぎても細かすぎても損失増。浴条件と電流密度で適正化
熱処理(低温アニール)欠陥低減・導電性↑用途により実施。寸法変化・外観変化に注意
表面酸化対策接触抵抗↓軽い活性化リンス、防変色処理(例:防錆皮膜)を用途に合わせて選択
上層仕上げ接触安定・はんだ性必要に応じてNiバリア→Au/Tin等。導電・接触安定は向上するがコスト増
形状配慮実効抵抗の低減角は軽いR、排液・排気穴で厚みムラを抑え、導通経路を確保

接触抵抗を下げる小ワザ

  • 接触面の仕上げ粒度:粗すぎると点接触、細かすぎると皮膜破断が起きにくい。用途に応じて番手を選ぶ。
  • 酸化膜リフレッシュ:組立直前に軽く活性化(酸性洗浄など)→速やかに組立・封止。
  • 表面保護:屋外・汗・薬品環境では防変色処理やトップコートを検討。

発注前チェックリスト

  • 重視点:導電/はんだ/シールド/外観(優先順位を明確に)
  • 使用環境:屋外/海沿い/高湿/汗・油・薬品/温度条件
  • 導体要件:目標抵抗値 or 導体幅・長さ・電流値(逆算の手掛かり)
  • 形状の注意:深穴・細溝・薄肉・ねじ山・嵌合部(マスク要否)
  • 上層仕上げ:必要に応じNiバリア、Au/Tin、クリアコート等
  • 見せ面/治具痕:最重視面、痕を避けたい面の指定
  • 数量・納期:まとめ依頼は段取り効率↑でコスト最適

導電性が活きる応用業界・用途

  • 電子部品・基板まわり:端子・コネクタ、シールドケース、スルーホール配線の導通確保
  • 自動車・EV:バスバー、端子、センサー部の導電・はんだ性、筐体内シールド
  • 通信・RF:筐体内面の銅めっきで電磁波シールド、接触点の安定化
  • 電池・エネルギー:集電体・タブ、熱拡散(放熱)を兼ねた銅化
  • 精密機械・治具:導通経路の形成、はんだ・ろう付けの下地
  • 樹脂の金属化:無電解Cu→電解Cuで導電層を形成(軽量部材の導電化)

長持ち・安定運用のコツ

  • 使用後は水拭き→乾拭きで汗・油・水滴を残さない
  • 海水・薬品は早めに洗浄して変色・腐食を予防
  • 強い研磨剤・硬いタワシは微細傷→接触不良の原因に
  • 屋外は防変色処理・トップコートを検討(導電性とのバランスに留意)

よくある質問(Q&A)

Q. とにかく抵抗を下げたい。何から始める?
まずは厚み設計と浴管理(不純物・過添加を避ける)。次に接触面の仕上げ・酸化対策をセットで行うと効果的です。

Q. 銅の上にニッケルを載せると抵抗は上がる?
表面がNiになる分、表面の接触抵抗は変わります。耐変色・拡散バリアを優先したい場合にNiを使い、必要に応じてAu/Tin等で接触面を最適化します。

Q. 樹脂パーツも導電化できる?
前処理→無電解銅→電解銅の順で金属化できます。軽量化と導電を両立したいときに有効です。

免責・不明点

  • 本記事は一般的な目安です。膜厚・浴条件・仕上げ・価格・納期は品物と設備で変わります。
  • 具体的な統一数値(抵抗率・最適厚み・添加量など)は用途や装置で異なり、本記事では一律値は確認できていません。見積時に要件をご共有ください。
  • 環境・安全・法令は地域差があります。加工会社の指示・地域ルールに従ってください。

参考情報

  • 酸性硫酸銅めっきの基礎と浴管理の考え方
  • 銅めっきのはんだ付け性・接触抵抗に関する一般的なガイド
  • 樹脂金属化(無電解Cu→電解Cu)の基礎と用途事例

最終更新:2025年11月14日(日本時間)。本記事は本記事時点の公知情報に基づいています。

投稿者プロフィール
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群馬県高崎市にある老舗のめっき会社。クロムめっき、ニッケルめっき、銅めっきなどを手掛ける。
大型の層を配備しており、長尺物などに対応可能。