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コラム
COLUMN
2025.12.12

銅めっきの微細配線技術とは?電子デバイス製造の最前線

更新日:2025.12.17

スマホや車載機器、データセンター向けの電子機器では、「小型なのに高性能」「熱や振動に強い」「大量生産で安定品質」が同時に求められます。その中心にあるのが微細配線で、材料としては電気が通りやすい銅(Cu)が主役です。本記事では、銅めっきで微細配線を作る考え方、代表的な工程、失敗を防ぐチェックポイントを分かりやすく整理します。

微細配線と「銅めっき」の関係

微細配線は、プリント基板(PCB)や半導体パッケージ(基板・配線層)などで、非常に細い線を高密度に作る技術です。銅めっきは、溝や穴(ビア)に銅を成長させて配線そのもの配線をつなぐ柱(ビア)を作るために使われます。

  • 銅が選ばれる理由:電気抵抗が低く、配線損失を抑えやすい
  • めっきの強み:狙った場所にだけ銅を成長させられる(量産向き)
  • 難しい点:細くなるほど「埋まりにくい」「欠陥が見えにくい」「一部の条件ズレが致命傷」になりやすい

どこで使われる?代表的な適用先

  • 高密度基板(HDI):スマホ・ウェアラブル・車載ECUなど
  • 半導体パッケージ:RDL(再配線層)や基板の微細配線、チップレット実装など
  • 部品内部の接続:ビア(層間接続)、マイクロビア、ビルドアップ層
  • 熱・電流が厳しい部位:電源系、バッテリー周辺、インバータ周辺(用途により仕様が大きく変わります)

銅めっき微細配線の基本プロセス

実際の製造は工法や製品で変わりますが、考え方は共通していて、概ね次の流れになります。

工程目的失敗が起きやすい点
①前処理(洗浄・活性化)表面を清浄にして密着を確保油分・酸化膜・微粒子の残り
②シード層形成(導通層)めっきを成長させる「土台」を作るシード切れ・膜ムラ(後で断線要因)
③レジスト形成(型を作る)配線形状の「壁」を作るパターン欠け・残渣・密着不良
④銅めっき(成長)配線・ビアを銅で形成埋め込み不足(ボイド)、盛り過ぎ(ブリッジ)
⑤レジスト剥離・シードエッチング不要部を除去して配線を仕上げ過剰エッチング(細り)、残し(ショート)
⑥表面仕上げ(用途により)はんだ付け性・防錆・接触抵抗調整仕上げ選定ミスで抵抗/腐食/信頼性が悪化

「最前線」で重視される3つの技術テーマ

微細化が進むほど、銅めっきは「ただ厚く付ける」ではなく、狙った形に埋める欠陥を作らない工程ばらつきを抑えるが重要になります。

  • 1) ビア(穴)の確実な埋め込み:深い穴ほど、内部に空洞(ボイド)が残りやすい。浴の添加剤バランス、撹拌、電流の与え方(連続/パルス)で埋まり方が変わります。
  • 2) 形状のコントロール:細線は「横に太る」「角が盛る」「隣とつながる(ブリッジ)」が致命傷。レジスト形状・電流分布・薬液状態で差が出ます。
  • 3) 管理のデジタル化:温度・濃度・pH・ろ過・添加剤補給・稼働時間などをログ化し、異常を早期検知して不良ロットを作らない運用が増えています。

失敗を防ぐ:原因別チェックリスト(現場向け)

不具合は複合要因で起きますが、まずは「確定しやすい順」に潰すのが近道です。

不具合原因の候補(多い順)まず見るポイント対策の方向性
断線(オープン)シード切れ/エッチング過多/前処理不足断線位置が固定か、ロットで再現するかシード品質の監視、エッチング条件固定、洗浄の標準化
ショート(ブリッジ)めっき盛り過ぎ/レジスト欠け/異物隣接線の間隔で集中していないか電流条件・撹拌見直し、レジスト工程の清浄度強化
ボイド(埋まり不良)添加剤バランス/撹拌不足/ガス巻き込みビアの深さ・密度で偏りがあるか撹拌・流れ・電流の与え方を最適化、ろ過と脱泡
密着不良(剥がれ)前処理不足/表面酸化/素材側問題水濡れ性(油膜)、前処理槽の汚れ脱脂・活性条件の固定、工程待ち上限設定、素材受入基準
表面粗れ・ノジュール浴汚染/ろ過不足/電流密度過大ろ過差圧、スラッジ、治具接点の状態ろ過・清掃の周期化、立上げ制御、浴の更新ルール

仕様書・図面に書くべき項目(トラブル削減に直結)

  • 配線部の定義:見せ面、機能面、測定点(A/B/C)
  • 膜厚の考え方:目標値だけでなく「下限(最小厚)」を明記
  • 寸法の扱い:めっき後寸法の公差(めっきで変化する前提を共有)
  • 除外部位:嵌合・シール・接点など「付けない/付ける」を明確化
  • 検査条件:外観の照度・距離、膜厚測定方法、断面確認の頻度

Q&A(短く)

Q. 「微細配線」はどのくらい細いのですか?
業界・製品(基板/パッケージ/半導体)で定義が異なります。具体的な線幅・間隔の閾値は案件ごとに決められるため、本記事では一律の数値を確認できていません

Q. 銅めっきだけで耐食は十分ですか?
用途によります。銅は酸化しやすいため、接点・はんだ付け用途ではSn/Au等の仕上げを組み合わせる設計が一般的です。

Q. 不良が出たら最初に何を確認すべき?
まず「位置の再現性」です。同じ場所に出るなら治具/素材/シードの可能性が高く、ランダムなら浴・清浄度・異物を疑います。

免責・不明点

  • 本記事は一般的な技術整理です。最適条件(濃度・温度・電流密度・線幅など)は設備・製品仕様で変わるため、一律値は本記事では確認できていません
  • 「最前線」の具体例(最小寸法、最新世代の製造条件)は公開情報が限定的で、製造ノウハウに依存する部分があります。

参考情報(出典)

  • IPC(プリント基板・実装の国際工業会):https://www.ipc.org/
  • IEEE(電気電子学会:パッケージ/実装・材料の論文多数):https://www.ieee.org/
  • SEMI(半導体製造装置・材料関連):https://www.semi.org/
  • imec(半導体・パッケージ研究機関):https://www.imec-int.com/
  • キーワード例:Copper electroplating / Damascene / Via fill / SAP・mSAP / RDL / TSV

最終更新:2025年12月17日(日本時間)。

投稿者プロフィール
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群馬県高崎市にある老舗のめっき会社。クロムめっき、ニッケルめっき、銅めっきなどを手掛ける。
大型の層を配備しており、長尺物などに対応可能。