スマホや車載機器、データセンター向けの電子機器では、「小型なのに高性能」「熱や振動に強い」「大量生産で安定品質」が同時に求められます。その中心にあるのが微細配線で、材料としては電気が通りやすい銅(Cu)が主役です。本記事では、銅めっきで微細配線を作る考え方、代表的な工程、失敗を防ぐチェックポイントを分かりやすく整理します。
目次
微細配線は、プリント基板(PCB)や半導体パッケージ(基板・配線層)などで、非常に細い線を高密度に作る技術です。銅めっきは、溝や穴(ビア)に銅を成長させて配線そのものや配線をつなぐ柱(ビア)を作るために使われます。
実際の製造は工法や製品で変わりますが、考え方は共通していて、概ね次の流れになります。
| 工程 | 目的 | 失敗が起きやすい点 |
|---|---|---|
| ①前処理(洗浄・活性化) | 表面を清浄にして密着を確保 | 油分・酸化膜・微粒子の残り |
| ②シード層形成(導通層) | めっきを成長させる「土台」を作る | シード切れ・膜ムラ(後で断線要因) |
| ③レジスト形成(型を作る) | 配線形状の「壁」を作る | パターン欠け・残渣・密着不良 |
| ④銅めっき(成長) | 配線・ビアを銅で形成 | 埋め込み不足(ボイド)、盛り過ぎ(ブリッジ) |
| ⑤レジスト剥離・シードエッチング | 不要部を除去して配線を仕上げ | 過剰エッチング(細り)、残し(ショート) |
| ⑥表面仕上げ(用途により) | はんだ付け性・防錆・接触抵抗調整 | 仕上げ選定ミスで抵抗/腐食/信頼性が悪化 |
微細化が進むほど、銅めっきは「ただ厚く付ける」ではなく、狙った形に埋める・欠陥を作らない・工程ばらつきを抑えるが重要になります。
不具合は複合要因で起きますが、まずは「確定しやすい順」に潰すのが近道です。
| 不具合 | 原因の候補(多い順) | まず見るポイント | 対策の方向性 |
|---|---|---|---|
| 断線(オープン) | シード切れ/エッチング過多/前処理不足 | 断線位置が固定か、ロットで再現するか | シード品質の監視、エッチング条件固定、洗浄の標準化 |
| ショート(ブリッジ) | めっき盛り過ぎ/レジスト欠け/異物 | 隣接線の間隔で集中していないか | 電流条件・撹拌見直し、レジスト工程の清浄度強化 |
| ボイド(埋まり不良) | 添加剤バランス/撹拌不足/ガス巻き込み | ビアの深さ・密度で偏りがあるか | 撹拌・流れ・電流の与え方を最適化、ろ過と脱泡 |
| 密着不良(剥がれ) | 前処理不足/表面酸化/素材側問題 | 水濡れ性(油膜)、前処理槽の汚れ | 脱脂・活性条件の固定、工程待ち上限設定、素材受入基準 |
| 表面粗れ・ノジュール | 浴汚染/ろ過不足/電流密度過大 | ろ過差圧、スラッジ、治具接点の状態 | ろ過・清掃の周期化、立上げ制御、浴の更新ルール |
Q. 「微細配線」はどのくらい細いのですか?
業界・製品(基板/パッケージ/半導体)で定義が異なります。具体的な線幅・間隔の閾値は案件ごとに決められるため、本記事では一律の数値を確認できていません。
Q. 銅めっきだけで耐食は十分ですか?
用途によります。銅は酸化しやすいため、接点・はんだ付け用途ではSn/Au等の仕上げを組み合わせる設計が一般的です。
Q. 不良が出たら最初に何を確認すべき?
まず「位置の再現性」です。同じ場所に出るなら治具/素材/シードの可能性が高く、ランダムなら浴・清浄度・異物を疑います。
最終更新:2025年12月17日(日本時間)。
