六価クロム(Cr(VI))は強い毒性と発がん性が知られており、EUのREACH・RoHSや米国OSHAなどで管理が強化されています。本記事は、いま押さえておきたい規制の要点と、現実的な代替・対策をやさしく整理します。規制は更新が続くため、発注前に最新情報を確認してください。
先に3つのポイント
- RoHSの基本ライン:電気・電子機器では六価クロム0.1%(均質材料)が上限(EU RoHS)。
- REACHの動き:六価クロム物質(例:クロム酸/三酸化クロム)は認可対象で、2025年は制限案へ移行の検討が進行。
- 代替の主流:装飾は三価クロム(Cr(III))が拡大、硬質クロムの一部はHVOF溶射などで代替が進展。
規制の要点
- EU RoHS(電気・電子機器向け):六価クロムは0.1%(1000ppm)まで。部品ごとの「均質材料」単位で判定します。
- EU REACH(化学物質管理):六価クロム物質は認可(Annex XIV)で厳しく管理。2025年時点、より広範な制限制度への移行案が審議中。
- 米国OSHA(労働安全):作業環境中の六価クロムはPEL=5 μg/m³(8時間TWA)。局所排気・密閉化・PPEが前提。
いま何が変わっている?
- REACH:認可→制限制度へ置き換え案が進行。用途の限定・厳しいばく露/排出管理の下での継続可否が議論に。ユーザーはサプライヤ経由の適法性確認がより重要。
- 三価クロムの実用化が加速:装飾分野ではCr(III)で外観・耐食の実用例が増加。機能(硬質)分野は用途で要検証。
- 硬質クロム代替:HVOF/HVAF溶射やレーザークラッディングの採用拡大(航空・産業機械など)。
発注前に決めておくと安全なこと
- 用途と優先順位:外観/耐食/耐摩耗/導電/シールドなど。代替可否の判断が早くなります。
- 規制適合の要否:該当するならEU RoHS適合の明記(均質材料0.1%上限)。
- 代替の希望:装飾は三価クロム優先、耐摩耗は硬質クロム or HVOFの比較検討など、方針を共有。
- 形状配慮:角は軽い面取り、深穴は排液穴、マスキング部位(ねじ・嵌合・シール面)を図示。
- 実効性の確認:見せ面・膜厚の目安・治具痕許容、検査(外観・密着・必要に応じ導電/摩耗)を指定。
代表的な対応技術
- 三価クロム(Cr(III))装飾:六価クロム由来のリスクを低減。色味は浴設計で調整可能。最新の装飾分野で採用例が増えています。
- 硬質用途の代替:HVOF/HVAFにより高硬度・耐摩耗・耐食の組み合わせを狙えるケースあり(用途で要評価)。
- 従来硬質クロム継続時:OSHA等のガイドに沿った局所排気・囲い・個防具の徹底。浴添加剤(発泡抑制等)の規制動向にも注意。
よくある質問(Q&A)
Q. 家庭用の外観パーツは三価クロムで十分?
多くの外観用途で可能です。色味・ツヤの見本を共有すると仕上がりが安定します。
Q. 硬い摺動部はどうする?
硬質クロム vs HVOFを比較。寸法復元や研磨前提、使用環境(腐食・温度)を伝えると、最適な提案が得やすいです。
Q. 六価クロムは今後全面禁止?
EUでは認可から制限への移行案が議論中で、用途限定での継続可否が検討されています。一律の全面禁止時期は本記事時点で確認できていません。