ネオプレテックス株式会社
コラム
COLUMN
2025.10.10

装飾+機能性を両立するクロムめっき仕上げ設計のベストプラクティス

更新日:2025.12.06

装飾クロムは外観(色調・ツヤ)だけでなく、耐食・耐摩耗・清掃性などの機能も同時に設計できます。ここでは、層構成・形状配慮・検査基準・図面の書き方を一体で最適化するための実践ポイントをまとめます。

ポイント

  • 「下地Ni × Cr薄層」設計が要色調と耐食・耐摩耗の両立は下地Niで土台を作り、Crで最終質感と表面機能を付与。
  • 見せ面と除外部位を明記図面に見せ面・測定点・除外(ねじ/嵌合/シール)を示すと手戻りが激減。
  • 検査条件の固定化が品質を安定外観の照度・距離、膜厚方法(XRF)、粗さ方向、合否判定をテンプレ化。

層構成と役割(基本形)

主目的設計の勘所
基材(Fe/SUS/Al/Cu等)機械特性・寸法研磨・脱脂・活性で表面欠陥を極小化。Alはジンケート→Niストライク等。
下地Ni(半光沢+光沢Niなど)平滑化・耐食・色調土台半光沢でうねり抑制、光沢で鏡面感。多層Niで耐食と色の深みを調整。
仕上げCr(装飾Cr)最終色味・耐候・清掃性色味(青味/グレー感)は浴/条件による。膜厚は外観・機能のバランスで最小必要量。

色調と機能を合わせる設計手順

  • 色見本で合意:実物サンプル/色票を基準にし、許容色差を補足(必要ならΔE基準)。
  • 粗さレンジを選定:鏡面=意匠性高、微細粗さ=指紋やすり傷が目立ちにくく清掃性も両立。
  • 耐食・耐摩耗の必要度を数行で明記:「CASS○h点食無」「摺動××条件で初期摩耗率○○」など評価方法を先に定義。
  • 見せ面/治具痕の位置を図示:写真・スケッチで共通認識化。

形状別のコツ

形状/部位起きやすい事象設計・治具の対策
角・エッジ過厚/焼け、傷の強調面取りR付け、低電流立上げ、補助電極で分布平準化
深穴・内面厚み不足、色暗化補助電極、姿勢・極間最適化、排液/排気の設計
広い平面鏡面うねり・曇り下地研磨手順の固定化(番手→バフ)、半光沢→光沢Niの多層
装飾+摺動凝着/鳴き微細粗さの維持、潤滑設計、必要に応じCr後の仕上げラップ

図面・見積にそのまま使える雛形

(例)
仕様:装飾Ni/Cr(半光沢Ni t=○μm+光沢Ni t=○μm+Cr t=○μm)。
外観:基準見本No.○○に色味合わせ。検査距離○cm・照度○lx。
膜厚:測定点A/B/CでNi/Cr測定(XRF)。エッジ±××mm、ねじ・嵌合・シール面は除外。
粗さ:見せ面 Ra=○.○ μm(走査方向=周/軸)。
耐食(必要時):CASS ○hで点食無。
見せ面/治具痕:添付図の通り。治具痕は非見せ面側。

検査・評価の固定化

  • 外観:照度・距離・角度を固定。見せ面等級を明記。
  • 膜厚:XRFで代表点A/B/C。内面は治具・測定方向を指定。
  • 粗さ:Ra値と測定方向(流れ目/直交)を図示。
  • 密着(簡易):テープ/曲げ条件・合否を事前合意。

よくある不具合と是正の指針

症状主因の例是正の方向性
色ムラ/曇り下地研磨不足、浴管理ばらつき研磨手順見直し、浴の有機物管理、流量・温度安定化
ピンホール前処理残渣、微粒子混入脱脂・活性強化、ろ過循環、活性炭処理(必要時)
角の焼け電流集中面取りR、補助電極、低電流立上げ
凝着・鳴き過度鏡面、潤滑不足微細粗さ付与、潤滑条件の最適化

Q&A

Q. 三価クロムと六価クロムで見た目は変わる?
一般に、三価はややグレー、六価は青味銀色の傾向がありますが、浴設計・条件で調整できます。最終判断は実物見本での合意が確実です。

Q. 指紋や細傷が気になりにくい仕上げは?
半光沢ベースや微細粗さを残す仕上げが有効です。清掃頻度や使用環境も合わせて指定すると安定します。

Q. 標準の膜厚や耐食値は?
形状・用途・装置で変動が大きく、一律の標準値は本記事では確認できていません。評価条件と合否を図面側で明確にしてください。

免責・不明点

  • 本記事は一般的な設計指針です。膜厚・粗さ・色調・価格・納期は品物と設備で変わります。
  • 安全・環境・規格要件は改定されるため、運用時は最新の原典を確認してください。
  • 色差や耐食時間などの一律値は設備差が大きく、本記事では確認できていません。試作・見本で合意してください。

最終更新:2025年12月6日(日本時間)。

投稿者プロフィール
ネオプレテックス株式会社
ネオプレテックス株式会社
群馬県高崎市にある老舗のめっき会社。クロムめっき、ニッケルめっき、銅めっきなどを手掛ける。
大型の層を配備しており、長尺物などに対応可能。