医療機器でニッケル(Ni)めっきを用いる場合、生体適合性・清浄度・滅菌耐性・腐食/摩耗・電気特性を総合的に設計し、再現性のある検査手順で裏付けることが重要です。本記事は非植込み系(診断・治療周辺、体表接触、体外循環装置部品など)を主対象として、実務の要点を簡潔に整理します。
目次
| 観点 | 要件の狙い | 設計・評価のポイント |
|---|---|---|
| 生体適合性 | 皮膚感作・刺激・溶出管理 | Niは下地運用が基本。表層はAu/Sn等。化学特性評価と必要な生物学的評価を段階的に。 |
| 滅菌耐性 | 繰返し滅菌で劣化しない | オートクレーブ/EtO/プラズマ/γ条件を固定し、前後の外観・膜厚・密着・電気特性を比較。 |
| 腐食・変色 | 体液・洗浄剤・消毒剤環境で安定 | 下地Ni+表層Cr/Au等でバリア。洗浄剤・消毒剤の代表条件で耐性評価。 |
| 電気特性 | 接触抵抗・導電性・遮蔽 | 接点はNi下地+Au/Sn仕上げ、EMIシールドは均一膜厚が重要。接触抵抗は荷重条件付きで規定。 |
| 清浄度 | 残留油・微粒子の低減 | 前処理(脱脂→活性→ストライク)と超音波・多段リンス。ロットごと清浄検査を標準化。 |
注意:植込み機器など長期体内暴露が想定される用途でのNi直接暴露の可否は、機器の分類・接触時間・リスクマネジメントに依存し、本記事では一律の可否を確認できていません。
(例:非植込み・接点部品)
仕様:Ni下地 t=○μm+Au仕上げ t=○μm(またはSn t=○μm)。
膜厚測定:XRF、測定点A/B/C、エッジ±××mm除外。
外観:見せ面等級○、検査距離○cm、照度○lx。
電気特性:接触抵抗Rc≤○mΩ(荷重××N、回数○)。
滅菌耐性:オートクレーブ○℃×○分×○サイクル後、外観・Rc基準内。
除外:ねじ・嵌合・シール面はめっき除外(マスキング)。
| 症状 | 主因の例 | 対策 |
|---|---|---|
| 剥離・ブリスター | 前処理不足、搬送遅延 | 脱脂・活性強化、ストライクNi採用、搬送短縮・多段リンス |
| 角の焼け/過厚 | 電流集中 | 面取りR、補助電極、低電流立上げ、姿勢最適化 |
| 滅菌後の変色 | 表層保護不足、薬剤との反応 | 表層Au/Crの最適化、洗浄/滅菌条件の見直し |
| 接触抵抗の上昇 | 酸化皮膜、汚染 | Au/Sn仕上げ、表面活性・清掃手順の標準化 |
Q. 医療向けの「標準膜厚」はありますか?
機器分類・接触部位・滅菌条件で最適値が変わるため、本記事では一律の標準値を確認できていません。想定条件で前後比較試験を行い合意してください。
Q. ニッケルアレルギーが心配です。
接触面はNi露出を避け、Au/Snなどで被覆し、必要に応じ溶出評価を実施します。
Q. 電解Niと無電解Ni-Pはどちらが良い?
外観/厚付け/能率重視なら電解Ni、複雑形状の均一性重視なら無電解Ni-Pが適します。
最終更新:2025年12月9日(日本時間)。
