ニッケルめっきには、リンを含むNi-P(無電解ニッケルリン)と、ホウ素を含むNi-B(無電解ニッケルボロン)という合金タイプがあります。どちらもムラの少ない均一な皮膜が作れ、複雑形状にも向きます。この記事では、違いと選び方をやさしく整理します。
先に3つのポイント
- Ni-Pは「防さび(耐食)と外観のバランス」が得意。海沿い・湿気の多い環境にも向きやすい。
- Ni-Bは「硬さ・耐摩耗」が得意。摺動部・工具類・金型補修などに使われることが多い。
- 熱処理の有無で性質が変わる(硬さ・はんだ付け性など)。用途と後工程を先に伝えると最適化しやすい。
Ni-PとNi-Bの違い
| 項目 | Ni-P(ニッケル+リン) | Ni-B(ニッケル+ホウ素) |
|---|
| 得意分野 | 耐食性・外観、均一めっき | 高硬度・耐摩耗、均一めっき |
| 見た目 | 半光沢〜光沢、落ち着いた銀色 | ややグレーがかった銀色(仕上げで光沢可) |
| 硬さの傾向 | 標準〜熱処理でアップ | 標準で硬め、熱処理でさらにアップ |
| 耐食性 | 高い(特に高リンタイプ) | Ni-Pよりはやや劣ることが多い |
| はんだ付け性 | 熱処理条件で可否が変わる(要相談) | 条件次第。用途により下地や活性化を検討 |
| 主な用途 | 装飾、機構部品、電装部品の下地、耐食部品 | 摺動・摩耗部、工具、金型の補修や寸法調整 |
どちらを選ぶ?(用途別の目安)
- サビに強く長持ちさせたい/屋外や湿気が気になる → Ni-P
- 擦れる部品・滑りを良くしたい・摩耗を抑えたい → Ni-B(必要に応じて研磨やオイル管理も)
- 複雑形状で均一にめっきしたい/薄肉や細かい溝がある → どちらも有効(均一析出が得意)
- 後で金・錫・はんだを重ねたい → 下地や熱処理条件を事前共有(Ni-Pの活用が多い)
設計と依頼のコツ
- 目的を一言で:「耐食重視」か「耐摩耗重視」かを先に伝える。
- 使用環境:屋外/海沿い/高湿/油や粉塵/温度条件など。
- 後工程:研磨・はんだ付け・金めっき・塗装などの有無(熱処理の要否が変わる)。
- 形状配慮:角は少し丸める(面取り)とムラや「焼け」対策に有効。ねじ山・嵌合部はめっき不要(マスク)指示を図で明確に。
- 見せ面/治具痕:特にキレイにしたい面、治具痕を避けたい面を指定。
- 数量と納期:まとめ依頼は段取り効率が上がり、コスト最適化に繋がりやすい。
長持ちさせる使い方
- 使用後の拭き取り:水分・汗・油は早めに落とし、乾拭きで仕上げ。
- 摺動部は潤滑:油膜を切らさない(Ni-Bでも無潤滑は摩耗が進みやすい)。
- 強い研磨剤は避ける:微細傷はサビや摩耗の起点に。
よくある質問(Q&A)
Q. 見た目もキレイで、長く使いたいです。
まずはNi-Pが候補です。外観重視なら仕上げ方法(半光沢/光沢)やトップコートの有無も相談してください。
Q. 擦れて減る部品に使いたいです。
Ni-Bが向きます。必要に応じて熱処理や研磨、潤滑管理とセットで検討すると効果的です。
Q. はんだ付けや金めっきと組み合わせたいです。
下地や活性化、熱処理条件で相性が変わります。工程全体(誰がどこで何をするか)を事前に共有してください。
免責・不明点
- 本記事は一般的な目安です。膜厚・熱処理・研磨条件・価格・納期は品物と設備で変わります。
- 具体的な統一数値(硬さ・膜厚・耐食試験値など)は案件により異なり、本記事では一律値は確認できていません。見積時に最新条件をご確認ください。
- 環境・安全・法令は地域差があります。加工会社の指示・地域ルールに従ってください。