ネオプレテックス株式会社
コラム
COLUMN
2025.12.19

めっき廃液処理と環境保全の最新動向|持続可能な表面処理とは

更新日:2025.12.26

めっき工場の環境対応は「法律を守る」だけでなく、水・薬品・金属をムダにしない設計へ移っています。ポイントは、①廃液を混ぜない(分別)②危険成分は確実に無害化③金属を回収して廃棄量を減らす、の3つ。本記事では、めっき廃液の基本と、近年重視されている“持続可能な表面処理”の考え方を、現場チェックリスト付きで整理します。

まず押さえる:めっき廃液は「成分ごとに処理が違う」

めっき廃液は、同じ「排水」でも中身がバラバラです。処理方法は、含まれる成分で変わります。

  • クロム系六価クロム(Cr(VI))を含む可能性。基本は還元→沈殿除去
  • シアン系シアン化合物を含む可能性。基本は酸化分解
  • 重金属系Ni、Cu、Znなど。基本は中和・凝集沈殿→ろ過
  • 酸・アルカリpHが極端。基本は中和
  • 有機物・添加剤光沢剤など。処理を難しくすることがあり、活性炭や分離処理が検討対象。

法規制の「最低ライン」を誤解しない

日本では、水質汚濁防止法の「一般排水基準」がベースになります。さらに、自治体の上乗せ基準や、下水放流(下水道)か河川放流かで要件が変わります。
例として、一般排水基準(有害物質)の許容限度には、六価クロム化合物 0.2 mg/Lシアン化合物 1 mg/L鉛 0.1 mg/Lカドミウム 0.03 mg/Lなどが示されています。

また、六価クロムの排水基準は2024年4月1日施行で 0.5 mg/L → 0.2 mg/Lへ改正された旨が自治体等で案内されています。

めっき廃液処理の基本フロー(現場で一番効く順番)

  • ①分別する:クロム系、シアン系、重金属系、酸・アルカリを混ぜない(混ざるほど難しくなります)。
  • ②無害化する:六価クロムは還元、シアンは酸化など、成分に合わせた前処理を行う。
  • ③中和・凝集沈殿:重金属を水酸化物として沈殿させ、フロック化して分離。
  • ④固液分離:沈殿→ろ過(フィルタープレス等)で汚泥を回収。
  • ⑤仕上げ:必要に応じて、砂ろ過・活性炭・イオン交換などで微量成分を低減。
  • ⑥汚泥を適正処理:分析・区分・マニフェスト管理を行い、適切な処理業者へ委託。

「持続可能」にする最新動向:いま注目される4つの方向性

1) 廃液を減らす(発生抑制)

  • リンス回数・流量の最適化(必要以上に水を使わない)
  • ドラッグアウト(持ち出し)低減:滴下時間の固定、治具形状の見直し

2) 金属を回収する(資源循環)

排水処理は「捨てる」だけでなく、回収して戻す発想が増えています。例として、イオン交換樹脂で希少金属を回収する取り組みや、汚泥の脱水・減容化で処理費を下げる取り組みが報告されています。

3) “見える化”で不良ロットを作らない(ログ管理)

  • pH・温度・ORP(酸化還元)・流量・ろ過差圧などを記録し、逸脱時にアラート
  • 薬品補給量・廃液量・汚泥量を月次で集計(コストと環境負荷が同時に見える)

4) 国際的には「BAT(最良利用可能技術)」が更新され続けている

EUでは表面処理分野(Surface Treatment of Metals and Plastics)のBAT文書が見直し・更新されており、排水・薬品・資源効率の管理が重視されています。海外取引がある場合は、顧客要求として波及することがあります。

現場チェックリスト:最低限ここは毎日確認

  • 分別:クロム系・シアン系・重金属系が混ざっていない(配管・ピット含む)
  • 計測:pH、温度、(必要なら)ORP、ろ過差圧が基準範囲
  • 薬品:還元剤・酸化剤・中和剤・凝集剤の在庫と投入記録が取れている
  • 固液分離:沈殿槽の滞留、ろ過の目詰まり、脱水ケーキの含水率が異常でない
  • 汚泥:ラベル、保管区画、漏えい対策、委託先、マニフェストが整合
  • 異常時:止める判断基準(誰が停止できるか)が決まっている

よくある失敗と対策(短く)

つまずき起きやすい原因対策
数値が安定しない流入濃度が日で変動/分別が不十分分別の徹底、バッファ槽で均一化、ログで原因特定
沈殿しない・濁るpHが合っていない/キレート影響pH管理の固定、凝集条件の再設定(工程別に分ける)
汚泥が増えすぎる過剰薬品投入/水使用量が多い投入量の基準化、リンス最適化、脱水・減容化
委託費が高騰含水率が高い/区分が曖昧脱水強化、成分情報を整理、適正区分で委託

免責・不明点

  • 排水基準は、放流先(公共用水域/下水道)や自治体条例で変わります。最終判断は所管自治体・下水道管理者・法令確認が必要です。
  • 有機添加剤やキレート剤の影響は、浴組成・製品で大きく変わります。処理条件の最適値(薬品量・pH範囲など)について、本記事では一律値を確認できていません

参考情報(出典)

  • 環境省:一般排水基準(有害物質の許容限度) https://www.env.go.jp/water/impure/haisui.html
  • 静岡市:近年の水質汚濁防止法の改正(六価クロム 2024/4/1施行の説明) https://www.city.shizuoka.lg.jp/s5382/s012241.html
  • EU JRC:BAT reference documents(STM BREFの更新情報) https://bureau-industrial-transformation.jrc.ec.europa.eu/reference
  • EU JRC:Surface Treatment of Metals and Plastics(STM BREF D1 2025-02 PDF) https://eippcb.jrc.ec.europa.eu/sites/default/files/2025-02/STM%20BREF_D1_%20BW-bref.pdf
  • 経済産業省:PRTR排出量等算出マニュアルQ&A https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/law/qa/manual_faq.html
  • 環境省:PRTR届出の手引き(2025年版) https://www.env.go.jp/chemi/prtr/notification/submit/tebiki/tebiki_all.pdf
  • 環境省:特別管理産業廃棄物の種類及び判定基準等(PDF) https://www.env.go.jp/content/900534406.pdf
  • METI:令和6年度 中小企業等産業公害防止対策等調査(資源循環・汚泥減容等の事例) https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2024FY/1000101.pdf

最終更新:2025年12月19日(日本時間)。

投稿者プロフィール
ネオプレテックス株式会社
ネオプレテックス株式会社
群馬県高崎市にある老舗のめっき会社。クロムめっき、ニッケルめっき、銅めっきなどを手掛ける。
大型の層を配備しており、長尺物などに対応可能。